土佐高校野球部 TOSA High-School Baseball Club

1949年、野球部が創部される。「学問とスポーツの両立強化」という土佐高校開校30周年目標の下での運動部設立に伴う。1950年、故・溝渕峰男氏が監督として迎え入れられ、1952年にセンバツ初出場、翌年には夏の甲子園初出場で準優勝を収めた。同大会では延長の熱戦の末に惜敗するも、「全力疾走」で高校野球の理想を体現する姿は、「優勝旗のない優勝校」と謳われる。準優勝楯と共に高知に帰った土佐校ナインを高知駅頭で出迎えたのは、3万人の県民だった。高知県勢として初の決勝進出となったこの快挙は、県民を大いに沸かせ、勇気づけるものであった。

1963年、土佐高校出身である故・籠尾良雄氏が監督として就任し、部は一時遠のいた甲子園の道を再び歩み始める。翌年春にはセンバツ4強に進出し、1966年には部員12人という少数精鋭で春のセンバツ準優勝を果たす。籠尾監督が勇退する1993年夏までの30年間、春4回、夏3回の甲子園出場を遂げた。

土佐高校野球部の代名詞として知られる「全力疾走」の追求は、土佐高校ならではの背景に基づく。限られた部員数や時間の中、効率的に練習するために見出されたのが土佐の全力疾走スタイルである。数々の大会を通して全国の高校野球ファンから評価されている。また、この伝統を開花結実させた籠尾氏は、野球と勉強を含むすべてにひたむきに取り組む必要性からも導かれたと語る。

1966年のセンバツ準優勝後、OBや生徒・保護者の協力により「右文寮」が設立された。「それ右文と尚武こそ」と校歌にも歌われるように、文武両道の精神が創部以来継承されている。甲子園出場はもちろん、学問の成就にも努め、大学進学を目指す「右文尚武」を追い求める学生を力強く後押しするのが右文寮である。学問、スポーツ、礼節を重んじることが、土佐高野球部員の真髄であると言える。

2013年3月、私学として初めて21世紀枠で選出され、春のセンバツ甲子園に出場する。土佐高校の模範的な取り組みが評価された結果である。西内一人氏が監督としてチームを率いる中、2016年には3年ぶり8度目のセンバツ出場を果たし、学業と野球の両立に真摯に取り組む姿を示した。

土佐高校野球部卒業生の進路は、大学進学、その後様々な分野での活躍と多岐にわたる。多様な実績を背景に、近年では進学と甲子園の両立を志す部員が集まり、内部進学生に加えて県内外の中学校からの入学者も擁している。

また、学生野球の本分を全うするための充実した環境整備も魅力の一つである。野球部専用の向陽グラウンドに加えラプソードなど最新機器、外部スタッフによる専門的なサポートの導入、そして学業に配慮した寮を有する。土佐校野球部員は、「右文尚武」の精神を礎に、脈々と受け継がれる「全力疾走」の伝統を今日も体現している。